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PMHFの簡易導出 |
論理式だけによるIFUのPMHF式導出 その1
PMHF式は、故障シナリオを工学的に分解することでも導くことができます。ここでは、IFが修理されないIFU、IF unrepairableの場合を扱います。
$\overline{IF}$をIFの故障、$\overline{SM}$をSM1の故障とします。$DC_1$は、IF故障がSM1のカバレッジ内にある事象を表します。
まず、IF故障が発生した瞬間のVSG判定式を置きます。IF故障は、SM1が正常に動作し、かつそのIF故障がSM1のカバレッジ内にある場合にだけVSG抑止されます。したがって、VSGは次のように表されます。
$$ \{VSG\}=\{\overline{IF}\setminus(SM_{\sigma_{IF}}\cap DC_1)\} \tag{1080.1} $$
ここで、$SM_{\sigma_{IF}}$は、IF故障時点でSM1が正常であることを表します。したがって、(1080.1)は、IF故障から、IF故障時点でSM1によりVSG抑止される部分を除いた式です。
まず、差集合を積集合に変換し、さらにド・モルガンの法則を用います。
$$ \begin{eqnarray} \{VSG\}&=&\{\overline{IF}\cap\overline{(SM_{\sigma_{IF}}\cap DC_1)}\}\\ &=&\{\overline{IF}\cap(\overline{SM}_{\sigma_{IF}}\cup\overline{DC_1})\} \end{eqnarray} \tag{1080.2} $$
(1080.2)は、IF故障時点で、SM1が故障しているか、またはIF故障がSM1のカバレッジ外であればVSGになることを表します。ここで、$SM_{\sigma_{IF}}\cap DC_1$は、SM1が正常で、かつIF故障がSM1のカバレッジ内にある枝です。この枝は、(1080.1)でVSG抑止成功側として除かれています。
次に、(1080.2)の右辺に現れる条件$\overline{SM}_{\sigma_{IF}}\cup\overline{DC_1}$をMECEに分解します。
$$ \begin{eqnarray} \overline{SM}_{\sigma_{IF}}\cup\overline{DC_1} &=&(\overline{SM}_{\sigma_{IF}}\cap\overline{DC_1}) \sqcup (\overline{SM}_{\sigma_{IF}}\cap DC_1) \sqcup (SM_{\sigma_{IF}}\cap\overline{DC_1}) \end{eqnarray} \tag{1080.3} $$
この分解は、VSGになる条件だけを3通りに分けたものです。
1つ目は、IF故障時点でSM1が故障しており、かつIF故障がSM1のカバレッジ外にある場合です。
2つ目は、IF故障時点でSM1が故障しており、かつIF故障がSM1のカバレッジ内にある場合です。
3つ目は、IF故障時点でSM1は正常であり、かつIF故障がSM1のカバレッジ外にある場合です。
したがって、VSG事象は次の3つの排反事象に分かれます。
$$ \begin{eqnarray} \{VSG\} &=&\{\overline{IF}\cap\overline{SM}_{\sigma_{IF}}\cap\overline{DC_1}\} \sqcup \{\overline{IF}\cap\overline{SM}_{\sigma_{IF}}\cap DC_1\}\\ &&\sqcup \{\overline{IF}\cap SM_{\sigma_{IF}}\cap\overline{DC_1}\} \end{eqnarray} \tag{1080.4} $$
ここで、VSGになる3つの枝を故障分類の観点で整理します。
(1080.4)の第1項は、IF故障がSM1のカバレッジ外であり、かつIF故障時点でSM1も故障している枝です。しかし、この枝では、$\overline{IF}\cap\overline{DC_1}$だけでVSGに至ります。したがって、VSGを引き起こす最小原因はIF側にあり、SM1故障は最小原因集合には入りません。
(1080.4)の第3項は、IF故障がSM1のカバレッジ外であり、かつIF故障時点でSM1は正常である枝です。この枝も、$\overline{IF}\cap\overline{DC_1}$だけでVSGに至ります。
したがって、第1項と第3項は、どちらもSPFまたはRFに対応します。この2つをまとめると、次のようになります。
$$ \begin{eqnarray} \{\overline{IF}\cap\overline{SM}_{\sigma_{IF}}\cap\overline{DC_1}\} \sqcup \{\overline{IF}\cap SM_{\sigma_{IF}}\cap\overline{DC_1}\} &=&\{\overline{IF}\cap\overline{DC_1}\cap(\overline{SM}_{\sigma_{IF}}\sqcup SM_{\sigma_{IF}})\}\\ &=&\{\overline{IF}\cap\overline{DC_1}\}\equiv VSG_{\mathrm{SPF/RF}} \end{eqnarray} \tag{1080.5} $$
第1項は、IF故障がSM1のカバレッジ外にある枝です。規格用語では、SPFまたはRFに対応します。

一方、(1080.4)の第2項は、IF故障がSM1のカバレッジ内であり、かつIF故障時点でSM1が故障している枝です。この枝では、IF故障だけならSM1によりVSG抑止されるはずですが、SM1故障との組合せによりVSGに至ります。したがって、MPFであり、2個の故障によるためDPFです。
$$ \{\overline{IF}\cap DC_1\cap\overline{SM}_{\sigma_{IF}}\}\equiv VSG_{\mathrm{DPF}} \tag{1080.6} $$
第2項は、IF故障がSM1のカバレッジ内にあるが、SM1が故障している枝です。これはIF故障とSM1故障の組合せによるMPFであり、2個の故障によるためDPFです。

連続時間では、IF故障とSM1故障が同時に発生する確率はalmost surely 0です。したがって、IF故障時点でSM1が故障していることは、SM1故障がIF故障より前に発生していたことを意味します。この時間順序を表すため、次の記号を導入します。
$$ A\prec_L B\Longleftrightarrow A\text{が先に発生し、その後、暴露時間}L\text{以内に}B\text{が発生する}\\ A\prec_L B\Longleftrightarrow \sigma_A<\sigma_B\le\sigma_A+L \tag{1080.7} $$
この記法により、DPF枝は次のように書き直せます。
$$ VSG_{\mathrm{DPF}}\equiv\{\overline{SM}\prec(\overline{IF}\cap DC_1)\} \tag{1080.8} $$
以上より、VSG事象は、最終的に次の2つの排反事象に整理されます。
$$ \{VSG\}=VSG_{\mathrm{SPF/RF}}\sqcup VSG_{\mathrm{DPF}} \tag{1080.9} $$
ここまでで、VSGはSPF/RF枝とDPF枝に分解されました。次回は、DPF枝をさらに露出時間により分け、各枝を確率へ変換することで、IFUの場合のPMHF式を導きます。
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