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あるWebの記事について (2)

posted by sakurai on July 8, 2019 #125

同じ記事のPMHFについても怪しいところがあります。

まずPMHFそのものは単純で故障する頻度そのものである。ただ実際には1億回あたり1回未満というのはかなり難しい。一般にエレクトロニクス業界で使われている故障頻度には「FIT」(Failure in Time:10億時間あたりに発生する故障回数)と呼ばれるものがあるが、自動車向けのMCUなどではどんなに少ないものでも20FIT(10億時間あたり20回)といわれており、このままでは10^-8/hを満たせない。 ただ、PMHFは、ある特定の回路そのものの故障頻度ではなく、システム全体の故障頻度と見なすこともできる。例えば全ての部品を二重化しておき、片方が壊れてももう片方がそれを引き継ぐことができるとすれば、トータルとしての故障頻度は10FITに減る計算になり、これでASIL DのPMHFの目標をクリアできることになるからだ。

要約すれば、主系とバックアップ系が、それぞれ20FITの故障率を持つ2重化システムがあるとき、「トータルとしての故障頻度」が10FITになるということのようです。

実際には「トータルとしての故障頻度」はDPF(Dual Point Failure)の時であるから、車両寿命を$T_\text{lifetime}$として単純な確率計算では、 $$ \Pr\{\text{DPF}\}=\Pr\{\text{Channel 1 failed}\cap\text{Channel 2 failed}\} =\Pr\{\text{Channel 1 failed}\}\Pr\{\text{Channel 2 failed}\}\\ =(\lambda_\text{IF}T_\text{lifetime})(\lambda_\text{SM}T_\text{lifetime}) =(10\times 10^{-9})^2{T_\text{lifetime}}^2=1\times 10^{-16}{T_\text{lifetime}}^2 $$ となります。

この確率には主系⇒バックアップ系のフェイルオーバーだけでなく、その逆の場合も含まれるので、フェイルオーバーの場合のPMHF、すなわち平均PUDを求めると、この1/2を$T_\text{lifetime}$で割った値となります。 $$ M_\text{PMHF}=\overline{PUD}=\frac{1}{2}\lambda_\text{IF}\lambda_\text{SM}T_\text{lifetime} $$

この値は、車両寿命がいくら大きくても10FITにはなりません。例えば車両寿命が10万時間の場合のPMHF、すなわち平均PUDは、 $$ M_\text{PMHF}=\overline{PUD}=\frac{1}{2}\lambda_\text{IF}\lambda_\text{SM}T_\text{lifetime}=0.5\times 10^{-16}\cdot 1\times 10^{5}=0.005[FIT] $$ となります。逆にこれが10FITだとすると、車両寿命は5,708年というあり得ない値となってしまいます。

誤りの原因は2重化の場合の確率計算を1/2にしてしまったところにあります。本来は2重化システムにおいては、主系に故障があっても、バックアップ系が動作するフォールトトレラント性があるため、引き続いてバックアップ系にもフォールトが起きないとシステムの故障とはなりません。従って、確率計算としては両方にフォールトが起こる場合の、確率の掛け算になります。

以前の記事のように、レアイベント近似を用いれば、直列系は確率の足し算、並列系は確率の掛け算となります。表記の記事は、並列系で確率の掛け算をするところを、2冗長だから単純に1/2をかけたのかもしれませんが、正しくは10[FIT]ではなく0.005[FIT]のような、非常に低い数字になります。

いずれにせよ、故障頻度は故障確率として計算することを理解していないと、このような誤りを引き起こします。


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LFMの導出

posted by sakurai on July 4, 2019 #123

LFMの導出

LFM、$M_{\mathrm{LFM}}$に関する規格式を引用し、これを導出します。

図%%.1
図123.1 LFM規格式

前稿と同様な論証を行います。まずレイテントフォールト(LF)の故障率の計算式を見てみます。

故障分類フローで説明したように、レイテントフォールトとなるのは2とおり存在します。

  • 主機能のフォールトのSG侵害が1st SMにより抑止されている場合に、2nd SMで検出できない場合
  • SMのフォールト(これはSG侵害が起こらない)が2nd SMで検出できない場合

よって、安全関連に関する故障モードが$n$個ある場合に、i番目のLFの故障率$\lambda_{\mathrm{LF,}i}$の定義式は、存在しない$\lambda_i$に対しては0を返すものとすれば、

$$ \lambda_{\mathrm{LF,}i}:=DC_i\lambda_{\mathrm{IF,}i}(1-DC2_i)+\lambda_{\mathrm{SM,}i}(1-DC2_i)=\{DC_i\lambda_{\mathrm{IF,}i}+\lambda_{\mathrm{SM,}i}\}(1-DC2_i), \\ i=1, 2, ..., n\tag{123.1} $$ と表せます。この$DC2_i$はKパラメータで書けば、 $$ DC2_i=K_{\mathrm{IF,FMC,MPF,}i}, もしくは K_{\mathrm{SM,FMC,MPF,}i} $$ で、2nd SMがIFもしくはSMに対して、故障検出する割合を表します。(123.1)の両辺の総和を取れば、 $$ \sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{LF,}i}=\sum_{i=1}^n(DC_i\lambda_{\mathrm{IF,}i}+\lambda_{\mathrm{SM,}i})(1-DC2_i)\\ =\sum_{i=1}^n(DC_i\lambda_{\mathrm{IF,}i}+\lambda_{\mathrm{SM,}i})-\sum_{i=1}^n(DC_i\lambda_{\mathrm{IF,}i}+\lambda_{\mathrm{SM,}i})DC2_i \tag{123.2} $$ よって、$\sum_{i=1}^n(DC_i\lambda_{\mathrm{IF,}i}+\lambda_{\mathrm{SM,}i})$及び$\sum_{i=1}^n(DC_i\lambda_{\mathrm{IF,}i}+\lambda_{\mathrm{SM,}i})DC2_i$を移項し、 $$ \sum_{i=1}^n(DC_i\lambda_{\mathrm{IF,}i}+\lambda_{\mathrm{SM,}i})DC2_i=\sum_{i=1}^n(DC_i\lambda_{\mathrm{IF,}i}+\lambda_{\mathrm{SM,}i})-\sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{LF,}i} \tag{123.3} $$ ここで、DC2の、各々の故障率による加重平均を(123.4)のように定義し、(123.3)を(123.4)の分子に代入すれば、 $$ \overline{DC2}:=\frac{\sum_{i=1}^n(DC_i\lambda_{\mathrm{IF,}i}+\lambda_{\mathrm{SM,}i})DC2_i}{\sum_{i=1}^n(DC_i\lambda_{\mathrm{IF,}i}+\lambda_{\mathrm{SM,}i})} =\frac{\sum_{i=1}^n(DC_i\lambda_{\mathrm{IF,}i}+\lambda_{\mathrm{SM,}i})-\sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{LF,}i}}{\sum_{i=1}^n(DC_i\lambda_{\mathrm{IF,}i}+\lambda_{\mathrm{SM,}i})}\\ =1-\frac{\sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{LF,}i}}{\sum_{i=1}^n(DC_i\lambda_{\mathrm{IF,}i}+\lambda_{\mathrm{SM,}i})} \tag{123.4} $$ ここで、$DC_i\lambda_{\mathrm{IF,}i}=\lambda_{\mathrm{IF,}i}-\lambda_{\mathrm{RF,}i}$を代入すれば、(123.4)は $$ (123.4)=1-\frac{\sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{LF,}i}}{\sum_{i=1}^n(\lambda_{\mathrm{IF,}i}-\lambda_{\mathrm{RF,}i}+\lambda_{\mathrm{SM,}i})}=1-\frac{\sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{LF,}i}}{\sum_{i=1}^n(\lambda_i-\lambda_{\mathrm{RF,}i})}\tag{123.5} $$

これと(C.8)を比較すれば、$\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png}$


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SPFMとLFMの導出

posted by sakurai on July 2, 2019 #122

SPFMの導出

SPFM、$M_{\mathrm{SPFM}}$に関する規格式を引用し、これを導出します。

図%%.1
図122.1 SPFM規格式

まずレシデュアルフォールト(RF)の故障率の計算式を見てみます。ここでシングルポイントフォールト(SPF)を狭義に使えば、RFのうち、ダイアグノスティックカバレージ(DC)がゼロの時にSPFと等価であるため、SPFもRFも(広義の)RFとして表せることになります。つまり上式分子の$\lambda_{\mathrm{SPF}}+\lambda_{\mathrm{RF}}$は、DC=0の場合を含み、$\lambda_{\mathrm{RF}}$と簡単化できます。

さて、安全関連に関する故障モードが$n$個ある場合に、i番目の(広義の)RFの故障率$\lambda_{\mathrm{RF,}i}$式は、 $$ \lambda_{\mathrm{RF,}i}:=\lambda_{\mathrm{IF,}i}(1-DC_{i})\tag{122.1} $$ と定義されます。この$DC_i$はKパラメータで書けば、 $$ DC_i=K_{\mathrm{IF,FMC,RF,}i} $$ となり、1st SMがIFに対して、IFがSG侵害を抑止する割合を表します。(122.1)の両辺の総和を取れば、 $$ \sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{RF,}i}=\sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{IF,}i}(1-DC_{i}) =\sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{IF,}i}-\sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{IF,}i}DC_{i} \tag{122.2} $$ よって、 $$ \sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{IF,}i}DC_{i}=\sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{IF,}i}-\sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{RF,}i} \tag{122.3} $$ ここで、各々のSMにより防御される、IFの故障率によるDCの加重平均を次のように定義し、 $$ \overline{DC}:=\frac{\sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{IF,}i}DC_i}{\sum_{i=1}^n\lambda_i} \tag{122.4} $$ (122.3)を(122.4)の分子に代入すれば、 $$ (122.4)=\frac{\sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{IF,}i}-\sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{RF,}i}}{\sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{IF,}i}} =1-\frac{\sum_{i=1}^n\lambda_{\mathrm{RF,}i}}{\sum_{i=1}^n\lambda_i} \tag{122.4} $$ これと(C.7)を比較すれば、 $$ M_{\mathrm{SPFM}}=\overline{DC} $$ となるため、SPFMは$\img[-1.35em]{/images/withinseminar.png}$


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8.3.1 マイコンの取り扱い他

posted by sakurai on June 28, 2019 #120

8.3.1 マイコンの取り扱い

1st EditionではPart 10が主にISO 26262を半導体に適用する場合のガイドラインであったため、マイコンの取り扱いはPart 10に存在しましたが、2nd Editionになって、Part 10は全般的なガイドラインとなり、Part 11としてISO 26262を半導体に適用する場合のガイドラインが新設されたため、ISO 26262をマイコンに適用する場合の話題がPart 11に移動しました。

8.3.2 PMHF式

PMHF式については説明が追加されました。しかしながら、導出過程や導出前提を明らかにしたものではありません。また、式自体にも疑義があります。弊社ではPMHFを1st Edition発効から8年間に渡って研究しており、その結果としてIEEE最優秀論文賞を得ることができました。この論文は1st Editionの式を対象としていますが、新たに2nd Editonで式が変更されたため、それに基づく論文をIEEEに投稿中です。

弊社ではPMHFに関する論文をRAMS 2020に投稿中であり、そのため、最新の研究#103~108を一旦非開示としました。⇒RAMS 2020においてPMHF式の論文発表が終了したため、本記事を開示します。

12 システム開発のガイダンス

1st Editionの思想から拡張されているフォールトトレランス(耐故障性)についてまとめられた節が新設されました。1st Editionの思想は、とにかくフォールトが発生した場合にはFTTI中にシステムを安全状態に持っていけば、それでハザードが回避できるため、OKでした。

ところが、例えば高速道路の追い越し車線を120Km/hで走行中にフォールトを検出し、いくら安全状態だからといって、その場(追い越し車線内)で車両を停止させてしまうと、これはかなり危険な状態であることが容易に想像できます。このような場合は可能な限り左端の路側帯に寄せて停車するか、もしくは次の出口や安全な場所まで走行したいはずです。

本節ではこのような要求に対して解答を与えるものとなっており、基本的なアーキテクチャはIFに対するSM1としてバックアップ系を想定しています。例えば、IFについてASIL-Dを割り当てている時に、当然その平均PUD(=PMHF)は10[FIT]未満となりますが、故障したときには安全状態で停止するのではなく、動作し続けることがフォールトトレラントのために必要です。しかしながら、その場合にもASIL-Dを要求するものではありません。例えば、バックアップ系の時速が一定速度より遅ければASIL-Bとすることができます。その場合、速度は遅くても修理工場まで走行することが可能です。

本節には2とおり例示されており、緊急動作時間(EOTTI)以内に修理するか、上記のようにバックアップ系に切り替われば良いことになります。問題はEOTTIがあまりにも短い場合(例えば1sec未満)は修理工場に行くことができないので、その計算が必要となります。それが12.3.1.1に示されています。

次の図120.1の(2)は前記事にも掲載されている、2nd EditionのPMHF式(図109.3)の$T_\mathrm{service}$を$T_\mathrm{eotti}$と置き、$T_\mathrm{eotti}$について解いた式となっています。

図%%.1
図120.1 PMHF式に基づくEOTTIの導出

一方、次の図120.2の(3)は、ワースト時を想定しているようです。バックアップ系がEOTTI時間走行する状態での故障確率式です。

図%%.2
図120.2 車両寿命間の故障に基づくEOTTIの導出

いずれの式にも問題がありそうなので、次項で説明します。


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PMHFのバジェッティング

posted by sakurai on June 22, 2019 #116

Annex G

これも2nd Editionで新設されたAnnexですが、PMHFのバジェッティングについて記述されています。といっても従来からバジェッティングは現場では実施されていました。それと規格の意図するところは若干異なるようです。

従来のバジェッティング

まず1st Editionで実施されていたバジェッティングは、Part5 9.4.2.2 表6で規定される、PMHF目標値を分割するものでした。例えば、あるアイテムがASIL-Dの要求に基づき、アイテムにASIL-Dを割り当てます。ここで注意すべきは、エレメントには当初はASILは存在せず、あくまで要求の属性としてのASILが存在することです。エレメントには様々な安全目標によって、様々な要求が割り当てられますが、その中の最高レベルのASILにより、エレメントのASILが規定されます。

例えば、アイテムが3つのエレメントに分割され、それぞれ別のサプライヤによって開発される場合には、それぞれのサプライヤに対して、PMHF目標値を設定する必要があります。これを従来はバジェッティングと呼んでいました。アイテムで10FITの予算(バジェット)があり、それを配分するイメージとなります。例えば3つであれば、3.3FITずつ割り当てることができます。

図%%.1
図116.1 1st EditionのPMHFバジェッティング

2nd Editionのバジェッティング

規格でバジェットの単語が出てくるのはPart5 9.4.2.3の中です。9.4.2.3は上記の予算配分(分割)と言うよりも、多重割り当てと言ったほうがふさわしい節です。その理由は9.4.2.3は、上記のようにASIL-Dの目標をエレメントの数で分割するのではなく、比較的大きなシステム、例えばADASのように、物標認識システム、ブレーキ制御システム、エンジン制御システム等のように、それだけで従来はアイテムレベルであったシステムを複数組み合わせた場合のPMHFの考え方を表すものだからです。そしてその場合は、それぞれのシステムにASILを割り当て、10個までは組み合わせて良いと規定しています。例えばASIL-Dのシステムを10個までならぎりぎり目標が10倍となり10倍を超えませんが、10倍を超える目標値を設定することは許されていません。

図%%.2
図116.2 2nd EditionのPMHFバジェッティング

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posted by sakurai on June 20, 2019 #115

2nd Edition Annex F.3,4,5

次にF.3を見てみます。F.3は「評価対象のフォールト又は故障モードの選択基準の決定」となっています。本来はFMEDAのフォールトイベントの評価として全ての故障モードを評価すべきでしょうが、それだと数千件も評価しなければならないため、本節で故障モードの絞り込みを行うのだと思われます。

ちなみに、PMHFへの寄与率を厳密に考えると、PMHFのSPF部分とDPF部分がありますが、DPF部分は故障モードの組み合わせであるため、以下は全てPMHFの値(SPF+DPF)への、故障モードのSPF部分の寄与率と言う意味となります。

  1. SPFまたはRFに関して、DCが90%以下の全てのフォールト又は故障モード
  2. PMHFの寄与率が2%以上の全てのフォールト又は故障モード
  3. PMHFの寄与率が上位20位以内の全てのフォールト又は故障モード

この選択基準で絞り込むと、本例ではたまたま以下の値になります。

  1. 2件の故障モード⇒PMHFへの寄与率は95.68%
  2. 2件の故障モード(上記と同じ)⇒PMHFへの寄与率は95.68%
  3. 20件の故障モード⇒PMHFへの寄与率は99.89%

F.5では、これらは全てPMHFへの寄与率が95%以上であるから問題無しとしています。逆にそうであるなら、直接的に

  1. PMHFへの寄与率が95%を超えるまでの上位からの全てのフォールト又は故障モード

とするほうが自然ではないでしょうか。ちなみにこのような絞り込み条件を設定すると、2件の故障モード⇒PMHFへの寄与率は95.68%となり、上記1.及び2.と同様2件の故障モードを分析すれば良いことになります。以下に故障モードに関してPMHFへの寄与率が大きい順にリストします。

コンポーネント名 故障率
[FIT]
SR? 故障モード 分布[%] SM DC[%] λRF PMHFへの
寄与率[%]
PMHFへの
寄与率累積[%]
1 μC 100 Yes all 50 SM4 90 5.000 91.13 91.13
2 T61 5 Yes short 50 SM2 90 0.250 4.56 95.68

従って、分析方法をまとめれば、「 PMHFへの寄与率が95%を超えるまでの上位からの全てのフォールト又は故障モード」について絞り込みを実施し、それぞれに故障モードについて、安全方策がとられているかどうかを確認することになります。このときなぜ95%以上としたのかを問われたら、2nd Edition規格Annex F.3を参照したとなります。


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posted by sakurai on June 19, 2019 #114

2nd Edition Part 5 Annex F

2nd Editionで新設されたPart 5 Annex F のFMEDAシートを図114.1に示します。

図%%.1
図114.1 2nd Edition Part 5 Annex F FMEDA

前稿と比較して、右端の欄が2つ増えており、重要なのはDPF_detです。Annex Fの「F.2 PMHF評価を提供する安全分析」において、 $$ PMHF_{\mathrm{est}}=\lambda_{\mathrm{SPF}}+\lambda_{\mathrm{RF}}+\color{red}{\lambda_{\mathrm{DPF,det}}}\color{green}{\lambda_{\mathrm{DPF,lat}}}T_{\mathrm{lifetime}}\tag{114.1} $$ でPMHFを近似していると書かれています。$\lambda_{\mathrm{SPF}}$、$\lambda_{\mathrm{RF}}$はSPFMを求めるため、$\color{green}{\lambda_{\mathrm{DPF,lat}}}$もLFMを求めるために既に表にあるため、$\color{red}{\lambda_{\mathrm{DPF,det}}}$が新たに表に必要となります。

ただし、弊社では(114.1)には異論があります。正しいPMHF式は、1st Editionの3番目の一般式を示すと、 $$ M_{\mathrm{PMHF}}=\lambda_{\mathrm{RF}}+\lambda_{\mathrm{IF,DPF}}\lambda_{\mathrm{SM,lat}}T_{\mathrm{lifetime}}\tag{114.2} $$ です。これは、1st Editionで述べられているとおり故障順序によらない式であり、$\lambda_{\mathrm{SM,lat}}T_{\mathrm{lifetime}}\gg\lambda_{\mathrm{SM,det}}T_{\mathrm{service}}$かつ、IFがアンリペアラブル、SMがリペアラブルの場合に成り立つことは検証済みです。

(114.2)と(114.1)を比較すると、DPFの項の2つの故障率が異なっています。(114.1)では主機能と安全機構の値を合わせた故障率$\color{red}{\lambda_{\mathrm{DPF,det}}}$及び$\color{green}{\lambda_{\mathrm{DPF,lat}}}$を使用しています。双方をIFとSMの和に分解すれば、 $$ \color{red}{\lambda_{\mathrm{DPF,det}}} =\lambda_{\mathrm{IF,DPF,det}}+\lambda_{\mathrm{SM,DPF,det}}=K_{\mathrm{IF,RF}}\lambda_{\mathrm{IF}}K_{\mathrm{IF,MPF}}+\lambda_{\mathrm{SM}}K_{\mathrm{SM,MPF}} \tag{114.3} $$ であり、たまたま$K_{\mathrm{SM,MPF}}=0$、$K_{\mathrm{IF,MPF}}=1$であることから、(114.3)は $$ \color{red}{\lambda_{\mathrm{DPF,det}}}=K_{\mathrm{IF,RF}}\lambda_{\mathrm{IF}}=\lambda_{\mathrm{IF,DPF}}\tag{114.4} $$ となります。本来はPMHF式(114.2)を鑑みると、これは$\lambda_{\mathrm{IF,DPF}}$とするべきです。また、同様に$\color{green}{\lambda_{\mathrm{DPF,lat}}}$もIFとSMの部分に分解すれば、 $$ \color{green}{\lambda_{\mathrm{DPF,lat}}} =\lambda_{\mathrm{IF,DPF,lat}}+\lambda_{\mathrm{SM,DPF,lat}}=K_{\mathrm{IF,RF}}\lambda_{\mathrm{IF}}(1-K_{\mathrm{IF,MPF}})+\lambda_{\mathrm{SM}}(1-K_{\mathrm{SM,MPF}}) \tag{114.5} $$ ですが、たまたま前述の$K_{\mathrm{SM,MPF}}=0$、$K_{\mathrm{IF,MPF}}=1$の条件から(114.5)は $$ \color{green}{\lambda_{\mathrm{DPF,lat}}}=\lambda_{\mathrm{SM}}=\lambda_{\mathrm{SM,lat}}\tag{114.6} $$ となり、値は結果的に正しくなります。しかしながら、この条件が常に成り立つとは言えないのと、より正確な値を$T_{\mathrm{service}}$を用いて算出するためには、IFとSMの値を合わせないほうが良く、結論として(114.2)を用いるべきと考えます。


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posted by sakurai on June 18, 2019 #113

2nd Edition Part 5 Annex E

次に2nd Editionで新設されたAnnex F - PMHFの評価例について説明します。対象となる回路はAnnex EのFMEDAで解析した以下の回路です。

図%%.1
図113.1 2nd Edition Part 5 AnnexE 対象回路

それに基づくAnnex EのFMEDAシートの一部を示します。

図%%.2
図113.2 2nd Edition Part 5 Annex E FMEDA

これらは1st Editionの同じくAnnex Eに掲載されており、基本的に変わっていません。


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posted by sakurai on June 15, 2019 #112

1st Editionと2nd Editionとの変化点

本稿ではISO 26262:2011を1st Edition、ISO 26262:2018を2nd Editionと呼びます。さて、7年間の議論を経て発効された2nd Editionではどこがどう変わったのでしょうか?

本ブログではハードウェア領域においての変化点をご紹介していきます。ISO 26262においてのハードウェア領域は主にPart 5、Part 10、及びPart 11となります。

Part 5

本文中の細かいところも変更されていますが、一見して目に付くのがAnnexの章立てが変更されていることです。

  • 1st Edition Annex F (スケーリングファクタ)の廃止
  • 2nd Edition Annex F (PMHFの評価例)の追加
  • 2nd Edition Annex G (PMHFバジェッティング例)の追加
  • 2nd Edition Annex H(レイテントフォールト取扱い例)の追加

これらひとつひとつについて、「ISO 26262変化点セミナー」でご説明予定ですが、ブログでも簡単に解説していきたいと思います。

Annex F (スケーリングファクタ)の廃止

スケーリングファクタは異なる故障率データベースからの故障率を混ぜて使用する場合、土台を合わせないと正しく使用できないことから、それについての注意点を記述した章でした。ところが2nd Editionでは削除されています。元々、1st Editionでは9.2.4.7にのみスケーリングファクタが書かれており、そこからAnnex Fへ参照となっていたものです。この9.2.4.7はPMHF手法による、安全目標侵害確率の評価の最後の章となっています。つまり1st Editionでは、PMHFを正しく求める方法としてスケーリングファクタを導出し、故障率の土台を合わせて計算することを推奨していました。

一方2nd Editionでは、章が削除されたとはいえ、スケーリングの議論は8.4.3に新設されています。8.4は故障率を異なるデータソースから算出する話なので、スケーリングについて触れるにはちょうど良い場所です。さらに備考に、スケーリングを正しく行わない場合SPFM/LFMにも悪影響が及ぶとあり、スケーリング対象をPMHFのみからアーキテクチャメトリクスまで広げていることは妥当と考えます。

まとめると、独自の章としては削除されたものの、スケーリングは一層重要になります。


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Kパラメータは条件付き確率か (3)

posted by sakurai on May 12, 2019 #100

前稿(99.1)において、時刻$t$から$t+dt$において、IFのフォールトがVSG抑止される微小確率を求めると、 $$ \Pr\{\mathrm{IF\ prevented}\cap\mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\cap\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}\\ =\Pr\{\mathrm{IF\ prevented}\ |\ \mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\cap\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}\\ \cdot\Pr\{\mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\ |\ \mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}\cdot\Pr\{\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}\\ =K_{\mathrm{IF,FMC,RF}}\lambda_{\mathrm{IF}}R_{\mathrm{IF}}(t)dt \tag{100.1} $$ ただし、 $$ \Pr\{\mathrm{IF\ prevented}\ |\ \mathrm{IF\ failed\ at\ }t\cap\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}=K_{\mathrm{IF,FMC,RF}},\\ \Pr\{\mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\ |\ \mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}=\lambda_{\mathrm{IF}}dt,\\ \Pr\{\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}=R_{\mathrm{IF}}(t) $$ となりましたが、「DCはSMのアーキテクチャにより決定される」ことを前提とし、フォールト発生とフォールト検出は独立な事象と考えれば、同じ確率式は、 $$ \Pr\{\mathrm{IF\ prevented}\cap\mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\cap\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}\\ =\Pr\{\mathrm{IF\ preventable}\}\cdot\Pr\{\mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\ |\ \mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}\\ \cdot\Pr\{\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}=K_{\mathrm{IF,FMC,RF}}\lambda_{\mathrm{IF}}R_{\mathrm{IF}}(t)dt \tag{100.2} $$ ここで、 $$ \Pr\{\mathrm{IF\ preventable}\}=K_{\mathrm{IF,FMC,RF}}, \\ \Pr\{\mathrm{IF\ failed\ in\ }(t, t+dt]\ |\ \mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}=\lambda_{\mathrm{IF}}dt,\\ \Pr\{\mathrm{IF\ not\ failed\ before\ }t\}=R_{\mathrm{IF}}(t) $$ と求められます。従って、(100.1)の$\Pr\{\mathrm{IF\ prevented}\ |\ \mathrm{IF\ failed\ at\ }t\}$という確率的な$t$の関数を、(100.2)の$\Pr\{\mathrm{IF\ preventable}\}$という定数に置き換えることができます。

2nd SMの属性である$K_{\mathrm{FMC,MPF}}$についても同様の議論が成り立ち、Kパラメータは条件付き確率ではなく、アーキテクチャ的に決定している能力(定数)として扱います。結論として、

$$ K_{\mathrm{IF,FMC,RF}}:=\Pr\{\mathrm{IF\ preventable}\}\tag{100.3} $$ $$ K_{\mathrm{IF,FMC,MPF}}:=\Pr\{\mathrm{IF\ detectable}\}\tag{100.4} $$ $$ K_{\mathrm{SM,FMC,MPF}}:=\Pr\{\mathrm{SM\ detectable}\}\tag{100.5} $$


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